まさかまた着ないよね

お題「お気に入りの部屋着」

 

新しい洋服はどこかまだヨソユキで落ち着かない。

それはパジャマでも。下着でも。

何度か着用してホッとする。わたしでも。

 

夫は会社員なので帰宅したら着替えるとそれはそのまま寝れるパジャマと言う名の部屋着だ。休日は出かける直前までその部屋着のようなパジャマで居る。

夫の父は仕事から帰宅するとスーツからまずきちんとポロシャツとスラックスに着替えて夕飯を食し、お風呂に入った後でパジャマに着替えていた。

朝もパジャマからきちんとポロシャツとスラックスに着替えて食事に降りてきて食事を済ませてからスーツに着替えて出勤していた。

あの父なのに、この息子。

 

夫はとにかく着倒して洗濯して着倒して洗濯してクタクタになったものがお気に入りの部屋着だ。

 

夫は上の服を脱ぐ時に襟の後ろのタグ部分をつまんでグッと頭を抜いて脱いでいると思う。

何故ならばその部分が先ず破れるから。

わたしなんていままでの人生でその部分が破れたことなど一度もない。

その首の後ろ部分がちょっとほころんだ頃が一番の部屋着としての旬。

生地も柔らかくなってきて自分好みの着心地になっている。

 

そうこうしているうちに他の部分もくたびれてくる。

袖口とか襟ぐりの他の部分とか。

 

そうなると妻の

「もうその服、やめたら」の攻撃に合う。

それでもその攻撃を軽く10回ほどはすり抜けた後についには夫も観念する時期が来る。

 

でもくたくたボロボロになった服でもすごく愛着があったであろう捨てられそうなその服を優しい妻は「埃避けとしてカバーとして使おう」と蓋のない洋服ケースのカバーとして使っていた。

 

つい先日、夫が嬉々として

「捨てたと思っていたあれがあった 」と言ってきた。

その蓋のない洋服ケースの中の服を選ぼうとしてみつけたらしい。

 

事情を妻から説明され夫は納得したように見えたけど一応念を押した

 

「まさか、また着ないよね」

 

とりあえず、今のところ着てはいない。

でも、着たら着たでちょっと面白そうだ。